menu

2021/05/10

高等学校

中学学年だより:「校長挨拶《ダブルバインド》の克服」

校長挨拶《ダブルバインド》の克服 (中学だより)(2021. 5. 7[金])

 新入生の皆さん、入学おめでとうございます。在校生の皆さん、進級おめでとうございます。始業式に、放送でもお伝えしましたが、この4月から国本女子中学校の校長職を務めることになった坂東修三です。改めましてよろしくお願いします。

 コロナ禍の状況が始まってもう一年以上になります。言い換えれば、いろいろな意味での行動制限を伴う《自粛生活》が一年以上も続いているのです。この間、第1波から第3波の感染拡大を挟むように2回の「緊急事態宣言」が出され、変異種による第4波の感染拡大を受けて新たに「まん延防止措置」が今週から施行されたばかりです。《行動制限》はまだまだ続きそうです。

 「ニューノーマル」などと耳障りのいい言葉で呼ばれていますが、感染予防のための社会活動の制限は、私たちを鬱々とした気持ちにさせてきたのではないでしょうか? 会社や学校に通えるようになっても、なんとなく《気が晴れない》状態が続いているように思われます。

 これは、文化人類学や精神分析の分野で活躍したグレゴリー・ベイトソンというアメリカの学者の造語を援用すれば《ダブルバインド》の状態に私たちが陥っているからです。「ダブル」は「二重の」を意味し、「バインド」は皆さんが使っている「バインダー式のノート」の「バインド」で「束ねる、束縛する」の意味です。ベイトソンによれば、ふたつの矛盾する指示や要求を出されて、人間が精神的に困惑する状態に陥ることを意味します。

これを、コロナ禍での私たちの状態に適用すれば、《感染予防のために行動を控えなければならない》という縛りと、《経済活動も含めた社会活動は続けなければならない》という真逆の縛りが私たちを拘束することに当てはまります。《(予防のために)活動を控える》に対して《(生活のために)活動を続ける》という両立が困難な要求に、私たちが引き裂かれてしまうのです。両立困難に思えるのは、どちらも生きるためには、必要不可欠なことだからです。その結果、精神的に困惑状態となり、思考停止状態に陥る人もいます。私たちの「気が晴れない」「鬱々した気持ち」の原因は、まさしくダブルバインド状態を抜け出せないことにあるのです。

 どうしたら、抜け出せるのでしょうか。いいえ、抜け出すのは、コロナが完全終息しないかぎり不可能です。抜け出すのではなくて、むしろ、ダブルバインド状態を有効活用するぐらいに気持ちのモードを変換してみることです。中高生の生活に絡めて言えば、《予防のための活動自粛》が必要なときは、家の中で、ひとりで何か小さな目標を掲げて、じっくり専念してみることです。普段、部活動のためにできなかった読書にトライしたり、人によっては、学習面での遅れを取り戻したりするチャンスとして活用するのも一案です。抑制された状況においても、何か自分にできることはないかを考え、目標を掲げ、その実現に向けて努力してみることです。あとから振り返ると、その時間は自分を高めてくれた貴重な経験となることでしょう。そして、《行動制限》が緩められたならば、予防のためのガイドラインの範囲で、部活動やアウトドアの行動にいそしむことです。

  コロナが収まらない間は、ダブルバインド状態は続くのですから、この状態を少しでも自分にプラスになるように、実現できそうな課題に向き合うことです。ダブルバインド状態に引き裂かれて、思考停止状態にならないように心がけてください。日本の予防対策は、人々の自粛姿勢に依拠していますから、ストレスやダブルバインド状態はただでさえ大きくなります。ともあれ、感染に注意しながら、ひとりひとりが創意工夫で「鬱々した気分」の解消に努めるよう期待します。

  学校長 坂東 修三