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2021/07/22

高等学校

7月21日(水)1学期終業式:校長式辞

全校生の皆さん、おはようございます。1学期の終業式にあたり式辞を述べたいと思います。ご存じのように、先週の12日から、第5波の感染拡大に伴い、4回目の緊急事態宣言が発出され、本日の終業式も、感染予防のために、放送で行うことを余儀なくされました。

 

思い返せば、今学期は、入学式を除いて、始業式も含めたすべての全校集会が、放送で行われ、いわば《コロナで始まり、コロナで終わる》1学期と言っても過言ではないほど、コロナに翻弄された学期でした。それどころか、4月以前から在校する多くの皆さんにとっては、国本での学校生活がコロナによって、1年4ヶ月以上にわたって、影響を受けてきたことになります。本当にストレスフルな日々の連続になっているのではないでしょうか。そこで、今朝はコロナのことを話題にした朝礼講話を振り返りながら、私たちひとりひとりのレベルで、ストレスフルな状態にどう対処したらいいのかを中心にお話したいと思います。

 

その前に、コロナ禍の状況を簡単に確認しておきます。

昨日の7月20日現在で、世界の感染者数は1億9千万人を越え、亡くなった方の数は409万人に達し、まさしく世界規模の感染症を意味するパンデミックそのものになっています。日本国内では、84万人が感染し、1万5千人以上の方が亡くなっています。ちなみに、感染者数では世界のワーストはアメリカで、感染者数は3,400万人、死亡者数は61万人で、どちらも日本の40倍の多さです。アメリカの死亡者数61万人は、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタンでの戦争など、過去100年間にアメリカが参戦したすべての戦争におけるアメリカ側の死者数の合計40万人を大幅に上回っています。いかにコロナの破壊力がすさまじいものであるかが、はっきりとわかる数値です。


従って、私たちがどれほど感染予防に努めても、結果として感染者になってしまうのがコロナの恐ろしいところなのです。コロナがパンデミックになった今となっては、誰にでも感染の可能性があるのです。ですから、万一、周りの誰かがコロナに感染しても、決して差別したり心ない噂を流したりしないでください。同様に、自分が感染したとしても、決して自分を責めたりしないでください。私たちの誰もが感染するリスクがあるからこそ緊急事態宣言が出されているのです。言わずもがなのことですが、感染の問題と個人の責任の問題はなんら関係がないことを再度確認しておきたいと思います。

 

コロナが終息する見通しがまったく立たない今の状況で、コロナに対抗する手段は、やはりワクチンしかありません。ところが、日本のワクチン接種率はまだ総人口の17%にすぎないのです。イギリスの54%、アメリカの48%と比べてかなり遅れているのが実状です。日本でも、ワクチンの対象年齢を12歳まで引き下げる方針が決まったものの、実際に中高生対象の接種がいつ始まるかもまったく見通せない状況です。つまり、以前の朝礼講話でお話しした《ダブルバインド》の状態がしばらくは続くのです。

 

《ダブルバインド》を覚えているでしょうか。相対立する矛盾した命令を出されて、心がフリーズする状態を意味する言葉です。コロナに当てはめると、感染予防のために外出を控えるという《行動の制限》と、仕事や学校生活のために通常の活動を続けるという《行動の継続》、このふたつの両立困難な要求に私たちが引き裂かれる状態が《ダブルバインド》でした。結局、コロナ禍では、心身両面で、どっちつかずのグレーな状態に陥ってしまうのです。

 

ダブルバインド状態に、一筋の光が射してきた日がありました。6月23日の芸術鑑賞の日です。日常生活の中でモヤモヤした気分や抑えられた感情が発散され、心が清められることを《カタルシス》と呼ぶということもお伝えしましたが、この日は全校生が揃って束の間の《カタルシス》を経験して、気持ちのリセットが出来た時だと思います。教室での座学から離れて、心のリセットを図ることがいかに大切なことであるかを改めて気づかされた日でした。その意味でも、球技大会が延期になり、昨日の校外学習が中止になったのは、残念なことです。学校行事には、それぞれの目的とは別に、一服の清涼剤のように、鬱屈したグレーな気持ちを一掃してくれる《カタルシス》効果もあるからです。

 

明日からは夏休みが始まります。

緊急事態宣言下の今年は、精神的にも肉体的にも、どっちつかずのグレーな状態が強まることが懸念されます。実際、国立成育医療センターの調査によれば、コロナ禍で活動が制限され、先生や仲間との繋がりが希薄になることで、心の変調や身体の不調を訴える生徒が大幅に増えているとのことです。

 

コロナの感染拡大が勢いを増す今年の夏休みは、今まで以上に、ダブルバインドに負けない心のケアと体調管理が必要になります。そのためには、行動を制限された状況においても、何か自分に出来ることはないかを考え、ささやかでも具体的な目標を掲げて、その実現に努力してみることです。身近なところでは、ユーチューブにアップされている好きなアーティストのダンスやエクササイズをマスターしたり、文学であれコミックであれ、普段、学校がある時にはできなかったシリーズの全作品を読破したり、高3生ならば、弱点分野や得意分野に、充分とは言えなくても、とりあえず計画を立てて、一通り終えてみることです。重要なことは、達成感を味わうことです。物事を成し遂げた時に得られる達成感は、心のカンフル剤になります。時間をかけた分だけ、また努力をして苦労した分だけ達成感は大きくなり、自分自身の成長につながっていきます。ぜひ、何かひとつ、小さな目標を掲げて取り組んでください。そして、ときおり、仲間とメールで近況報告のチャットを楽しむのも気分転換になります。ダブルバインドの中で、うずくまり、沈みこんで行きがちな負のスパイラルから抜け出す効果的な手段にもなるはずです。

 

猛暑が予想される今年の夏休みは、熱中症やコロナの感染から命を守るだけでなく、心や身体の変調にも気をつけて過ごすようにしてください。二学期には成長した皆さんのさわやかな笑顔をふたたび見ることを楽しみにしています。一学期は本当にお疲れ様でした。以上で式辞とします。

 

学校長 坂東 修三