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2021/11/24

高等学校

11月24日朝礼:校長講話

《2021年度 2学期 第8回朝礼講話》2021.11.24(水)

 

校長:坂東 修三

 

ヤングケアラーと貧困

 

おはようございます。2学期第8回目の朝礼講話になります。今回は、『ヤングケアラーと貧困』というタイトルでお話しします。今日はそのパート1になります。主に、貧困が日本社会で拡大している現状についてお話します。

 

言葉の説明から始めます。先ず、ヤングケアラーとは、学校に通いながら、家の中では、掃除・洗濯・料理などの家事の大半や、病気や障害のある親や高齢者、さらには年下の兄弟姉妹などの世話や介護を担っている18歳未満の子供を指す言葉です。大半が中学高校に通学する生徒で、少数ですが働いている人もいます。当然、学校への登校も難しくなり、欠席が多くなったり、中には、家計を助けるためにアルバイトも引き受けざるをえなかったりするケースもあります。

 

ヤングケアラーの割合は、厚労省と文科省の最近の合同調査によれば、中学生の17人に1人(5.7%)、高校生の24人に1人(4.1%)が該当するようです。中学校ではクラスに2人、高校ではクラスに1人から2人はいることになります。さらにこの調査からは、ヤングケアラーが、家事やケアワークに費やす時間が、中学生で4時間、高校生もほぼ同じ3.8時間でしたが、中には7時間以上も費やす生徒が1割以上いることが判明しました。こうした過酷な状況では、勉強に時間を割くことも、部活動や友達との付き合いに向ける時間も確保できず、精神的にも孤立状態に追いやられているのです。ヤングケアラーこそ、大人のケアやサポートを必要としているのです。

 

注意すべきは、ヤングケアラーの全員が、例外なく貧しい家庭のメンバーだということです。とりわけ、「ひとり親」の家庭が50%以上を占めています。ヤングケアラーの問題は、貧困の問題と密接につながっているのです。

 

  ここで「貧困」について少し掘り下げてみたいと思います。社会学では、《貧困》を2種類に分けています。つまり、《絶対的貧困》と《相対的貧困》の2種類です。

 

《絶対的貧困》とは、主に途上国などの貧困に対して使われる言葉で、紛争地域などの迫害や虐待などから逃れてきた難民の人たちのように、集団の全員がほぼ例外なく、住む家もなく、その日の食料にもありつけず、生存に必要な最低限の条件が満たされていない状態を表します。

 

これに対して、《相対的貧困》とは、先進国の中での貧困に対して使われます(日本はこちらにあたります)。先進国に暮らす人々が、住んでいる社会の平均的生活水準の半分以下のレベルで暮らしている状態を《相対的貧困》と呼びます。当然、それぞれの先進国の経済状態で、平均水準は違ってきますが、日本の場合、4人家族で構成される世帯あたりの年間収入の平均額が約380万円ですので、その半分以下、つまり年間190万円以下が《相対的貧困》に分類されます。便宜上、190万円以下で生活することを《貧困》と呼ぶことにします。ひとり暮らしの単身世帯の年間収入の平均が約250万円ですので、年収125万円以下で暮らす独身の人が貧困に分類されます。この貧困ラインを表す2つの金額、190万円125万円を今後のためにも記憶に留めてください。(なお、統計学的には、《平均額》という言葉よりは、《中央値》と呼ぶのが正しいということを補足しておきます)

 

皆さんは、保護者に養育されている立場ですから、お金や金額の話をしてもピンと来ないかもしれません。でも、国本に保護者が納めている授業料等の学納金を例に挙げてみましょう。制服代込みですが、高校生の場合は、学納金だけで年間約100万円、中学生の場合、コースによって118万円から150万円必要になります。これ以外にも、修学旅行・海外研修、通学定期代、部活動費も必要になります。先ほどの独身者の貧困ラインは年収125万円以下、4人世帯の貧困ラインは年収で190万円以下でしたから、およそのイメージがつかめるのではないでしょうか。

 

4人世帯の貧困ラインは、先ほど確認したように、年収で190万円以下でしたので、190万円を12ヶ月で割ると1ヶ月あたり約16万円になります。ひと月16万円で、住居費や食事代や光熱水費だけでも家族4人が生計を立てることは困難ですから、当然、子どもを私立に通わせることなどとうてい無理な話です。

 

このように貧困ライン以下で生活する人々が人口全体に占める割合を《貧困率》と呼びますが、日本は直近の2018年のデータで、貧困率が《15.7%》で、国民の6~7人に1人が貧困状態にあり、貧困率の高さでは先進国の中ではアメリカ、韓国に次いで第3位という劣悪な状況です。また、18歳未満の子供の《貧困率》は《13.5%》に達し、18歳未満の子供の7~8人に1人が貧困を強いられているのです。統計上では、日本の子供の260万人が貧困状態に置かれていることになります。この260万人の中に、最初に述べた《ヤングケアラー》が含まれているのです。私たちは、子供の貧困の増大が、どんな影響を社会に及ぼすかを真剣に考える必要があります。

 

国本女子の皆さんは、まだ中高生の立場ですから、ヤングケアラーの男子や女子に支援の手を差し伸べることは出来ないと思います。皆さんにお願いしたいのは、先ずなによりも、自分たちと同年代の若者たちの中には、ヤングケアラーが存在しているという事実を知ることです。メディアなどで、ヤングケアラーや子供の貧困を伝えるニュースが報道されたときに、関心や興味のアンテナを向けることのできる感受性を磨いてほしいと思います。そのためには、普段から授業の中で、他人事ではなく自分の事として考える力を養い、行事や部活動などを通して、他者への配慮や思いやりの気持ちを示すことのできる社会性や人間性を身につけてほしいと願っています。次回は《貧困=格差の拡大》が子供たちにとってどんな意味を持つのかを明らかにします。以上で第8回目の朝礼講話を終了します。  (以上)