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2021/12/08

高等学校

12月8日朝礼:校長講話《呼び起こそう“レジリエンス”》

2021.12.8 (水) 2学期第10回朝礼講話

 

校長:坂東 修三

 

呼び起こそう《レジリエンス》

 

全校生の皆さん、おはようございます。早いもので、2学期の朝礼講話も10回目の今日が最後になります。今日のタイトルは『呼び起こそう《レジリエンス》』です。《レジリエンス(resilience)》とは、「生きる力を取り戻すこと」を意味する英語の言葉です。

 

その前に、先ず、コロナで始まり、コロナで終わろうとしている今年一年を通して、皆さんひとりひとりが懸命に生きてきた結果、なんとか今日の日を大過なく迎えたことに、称賛の言葉を贈りたいと思います。どうぞ、一年間頑張ってきた自分を褒めてあげてください。

 

この二年近くの間、コロナ禍で本来の形での学校生活が縮小し、仲間とのつながりも希薄になった結果、皆さんの中には、孤独感や無力感に襲われ、心が折れそうになる辛い時もあったと思います。

 

私たちの誰もが、2種類の自分を抱えて生きています。仲間や友人との関係の中を生きる自分、つまり《社会的な私》と、他の人々とのつながりから距離を置いた自分、つまり《孤独な私》《私だけの私》の2種類の自分が居て、毎日、私たちは、このふたつの自分の間を昔の時計の振り子のように行きつ戻りつを繰り返しています。コロナ禍の中では、《社会的な私》よりも、《孤独な私》の方に、時計の振り子が停まっている時間が長くなっていたかもしれません。

 

私たちが前向きに生きるには、いつも振り子が《2種類の私》の間で反転運動を繰り返す必要があるのです。他の人々との付き合いで《社会的な私》が疲れたときには、《孤独な私》に戻り、バッテリーに充電するように、生きる力が回復するのを待ってから《社会的な私》にバトンを渡して、ふたたび仲間たちの中で生き生きと活動する生活が始まるのです。生きる力を回復することを《レジリエンス》と呼びますが、皆さんの心にも、ようやく《レジリエンス》が芽生えてきたと思います。

 

明後日の10日からは期末試験が始まります。皆さんの誰もが、期末試験のことで頭がいっぱいになっていると思います。どうか《レジリエンス》をバネにして、期末試験に臨んでほしいと思います。

 

ところで、明後日の期末試験初日は、《世界人権宣言の日》です。73年前の12月10日に開かれた第3回国連総会で《世界人権宣言》が採択されました。第1条から第30条に至るまでの30の条文から成るこの宣言は、すべての人間に与えられるべき《尊厳や権利、自由や平等》を高らかにマニフェストしていますが、残念ながら、現実の世界では、依然として、人間としての尊厳や権利が侵害され、自由や平等も実現していません。様々な格差や差別もはびこっています。

 

2学期最初の朝礼講話では、学んだ知識を鵜吞みにするのではなく、学んだ知識(つまりlearnしたこと)が、根拠のない偏見や差別意識を含んでいないかどうかをチェックするすなわち《unlearn》することの重要性を学びました。先ずは、私たちの中に刷り込まれている差別意識を《捨て去る》こと、《unlearn》することから始めましょう。「隗(かい)より始めよ」という格言を私たちも自ら実践しようではありませんか。

 

また、5回目と6回目の講話では、《エポケー》という古代ギリシャ語の単語を通して、私たちが当然のことと思っていることや自明なものとみなしていることも、新たなる意味付けや解釈を加えることによって、変えることができるということを学びました。

 

例えば、《性差別》や《人種差別》という人間社会の2つの大きな差別も、《人間》という言葉の意味や解釈を拡大したり、ふくらませたりすることによって、禁止すべきものであることが共有されるようになりました。《性差別》に対しては《ジェンダー》、そして《人種差別》に対しては《エスニシティ》という新しい意味付けを加えることによって、《LBGTQ》や《多様性》を意味する《ダイバーシティ》という言葉が広まり、《性》や《人種》の《平等》という考え方がようやく浸透するようになりました。これこそ《エポケー》の効果にほかなりません。

 

試験勉強を通して獲得した知識は、すべて《unlearn》や《エポケー》の源(みなもと)になります。

そして《unlearn》や《エポケー》は、私たちが今生きている現実を分析し理解するための強力な武器になります。強力な武器を使えるためには、《レジリエンス》が欠かせません。期末試験を前にして、皆さんが《レジリエンス》のギアをもう一段あげることを期待して、2学期最後の朝礼講話を終わります。(以上)