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2022/01/06

高等学校

3学期始業式:校長式辞《「他者の靴を履く」2022年にしよう》

2022.1.6(木) 8:45 ~ 9:00 (15分) (放送室から)

 

3学期始業式での式辞 ― 「他者の靴を履く」2022年にしよう

― シンパシーからエンパシーへ

 

学校長 坂東 修三

 

全校生の皆さん、おはようございます。3学期の始業式にあたり式辞を述べたいと思います。タイトルは「他者の靴を履く2022年にしよう」です。その意味は、のちほど説明します。

 

さて、いったん終息するかに思えたコロナの感染状況が年末年始にかけて急激に増加しつつある事態に鑑み、朝礼は、今しばらくの間、放送で行うことにします。全校生の皆さんは、緊張を緩めることなく、引き続き感染予防に努めてください。本日は、高3生を除いて、高1高2の皆さんには校内模試が、また中学生には百人一首の大会がそれぞれ予定されているようですので、簡潔に済ませたいと思います。

 

先ず初めに部活動の活躍の報告です。年の瀬も押し迫った12月27日・28日の両日に開かれた第45回東京都高等学校アンサンブルコンテストで、吹奏楽部の部員の中から編成された2つの8重奏のグループが、参加団体340の中から金賞を授与され、共に本大会である2月6日の都大会に代表として出場することになりました。改めて、この機会を利用して、全校生とともに2つのグループの活躍と功績を称え、エールを送りたいと思います。本大会での更なる健闘を期待しております。

 

さて、3学期がスタートしました。2週間前の2学期の終業式では、冬休みの間に、新年はどんな自分になりたいのか、どんな自分を目標にするのかを、ステイホームの落ち着いた環境の中であれこれ考えてください、と皆さんに要請しました。また、その際に、一人一人の中に刷り込まれている《インナーペアレント》からの自立も併せてお願いしました。皆さんの中には、すでに新しい《自分探し》に着手している人もいるかもしれません。本日は、その補足としてのコメントを述べたいと思います。

 

今朝の式辞のタイトルの一部になっている『他者の靴を履く』というフレーズは、ブレディ・みかこさんというイギリス在住の日本人作家の著書の題名を借用したものです。ブレディさんは、この『他者の靴を履く』という表現を比ゆ的な意味で用いていて、「他者の立場に立って考えることができる」心の働きを指して使っています。そして、他者の立場に立って考えることができる能力を彼女は《エンパシー(empathy)》と呼ぶのです。その《エンパシー》を実践するには、インナーペアレントから自立していることが前提になるとも指摘しています。

 

私たち日本人には、「同情」や「共感」を意味する《シンパシー(sympathy)》という言葉は馴染み深いのですが、《エンパシー(empathy)》という言葉は余り耳にしません。英和辞典などでは、両方とも「共感」と訳されているので、余計区別がつかないのですが、両者の違いに関しては、終業式に配られた高1学年の『学年だより』の中で、学年主任の前田先生がわかりやすくコンパクトに説明されていますので、それを参考にしながら、違いを確認してみます。

 

まず、《シンパシー》は、「いいね」「わかる」といったSNSで頻繁に用いられる感情レベルのリアクションと同じで、相手に同情や憐みの気持ちを表したり、共感を示したりすることです。受動的な反応である点が特徴です。これに対して、《エンパシー》は、意見や立場が同じであろうが異なっていようが、相手の内面を理解しようとする知的な作業で、相手の立場に立って考えたり、理解したりする能動的な対応です。自己を主張する代わりに、先ずは、相手に耳を傾け、批判的にならずにその気持ちを汲み取ろうとする冷静な姿勢が特徴です。私たちの普段の付き合いの中でも、相手の立場に立って理解しようと試みることで、誤解が解消したり、相手を助けることができたりするケースが多々あります。前田先生は、このように説明した後に、エンパシーを活用したコミュニケーションの必要性を訴えています。また、エンパシーに基づいたコミュニケーションが実践できるためには、精神的に自立していることが必要になると説いています。

 

心の中にたまった感情や、抱えている悩みを他人に聴いてもらうだけで、カタルシスや安心感を覚えた経験は皆さんにもあると思います。私たちには、心を通わせる相手が、とりわけ同世代の仲間が必要なのです。このことを逆の観点から言えば、周囲の仲間に精神的に追い込まれている人がいる場合、私たちにそうした仲間の苦しみをキャッチできる豊かな感受性や、心の中を推し量ることのできる想像力、つまりは《エンパシー》があれば、苦しむ仲間を救うことも可能になるのです。当然、私たち自身も、《エンパシー》を持つ仲間に救われるときもあるでしょう。

 

政府の昨年の統計資料によれば、コロナ禍の状況で、支え合う仲間との付き合いが減り、コミュニケーションが希薄になったことによって、精神的に孤立状態に追いやられている中高生が著しく増加したことが報告されています。年が明けて、コロナによる感染状況の見通しも予断を許さない現状ですが、その一方で通常の生活も徐々に戻りつつあります。私たちは、コロナ禍で希薄になった仲間たちとの関係をふたたび充実したものにアップグレードするためにも、《エンパシー》を土台にしたコミュニケーション力を高める努力を日々の付き合いの中で続ける必要があります。

 

新年を迎えて、今年はどんな自分になろうとするのか、その模索の作業が始まったところだと推測しますが、目標とする自分の一部に、ぜひ《エンパシー能力》も含めてください。国本女子の皆さんには、2022年を、様々な場面で、『他者の靴を履く』すなわち《エンパシー》を実践する一年にしてもらいたいと願っています。以上で式辞とします。(以上)